「ない袖は触れない」というのが現実ではありますが回収に向けての努力は必要です。
【依頼要旨】
規約が新標準管理規約に準じていないため、理事会決議では裁判はできない。
滞納者も何度も返済すると口では言っているし、管理組合と念書を取り交わしたこともあるが、平気で約束を破っている。現在も強く言うと払いますと言って払うが、3ヶ月もするとまた滞納する。金額も徐々に溜まってきているし、どのように処理したらよいかという相談。
【解決に向けて】
まず、遅延損害金を課すことを相手に通知するよう指示。滞納者は誰でも知っているような一流企業に勤務していることも奥様情報から入手した。最終手段として給料の差し押さえというカードが切れることを私から理事会に説明。また、元本が返済されれば遅延損害金にはこだわらないことも理事会で確認した。ただし、本当は旧標準管理規約の「請求する」がこのマンションの規約で採用されていたため、総会、監査で追及を受ける可能性はゼロではなくそのリスクは私から説明した。しかしながら、合計した債権も30万円程度であり最悪、責任追及されたら遅延損害金分は理事が割り勘で負担しても良いということになった(それほどこの滞納者の不誠実さには理事一同憤慨していた)。
次に法的手段が取れないための代わりの方法として、強制執行認諾文言付の契約を公証役場で締結するよう提案した。今までも返済計画に対する念書は結んでいたのでその延長と考えれば、総会でも十分説明がつくと私から理事会には説明した。
後は滞納者と返済条件を詰めて公証役場に出向くだけとなったが、実際に滞納者に対し理事長が上手く話ができるかは疑問であったため、私が委任状をもらって契約交渉に当たることとした(契約代理として行政書士業務の一環として行った)。
滞納者は当初電話では、私と会うことを渋っていたが、何とか説得し、仕事から帰ってきた時間に管理人室で5分だけと言う形でアポを取ることに成功。後は給与の差し押さえの話を出すまでもなく、管理組合の理事会の憤慨振りと裁判も辞さずの姿勢(これはブラフですが)と「手続き的には半月あれば臨時総会で決議を取ることも可能だが、それだと貴方の滞納は皆さんの知るところとなってしまいます。私はそういうことはご家族にも気の毒だと思いますので○○さんが前向きに返済を検討いただけるなら何とか別の方法を考えて管理組合にも提案したいと思っています。」と伝えた時点で「方法をご相談したい」と来たので、当事務所に後日来てもらうことを約束してその場は去りました。
後日、事務所に彼が来たので公証役場での契約を勧め、彼も分割返済を条件に契約に同意したのでその後は粛々と手続きを進めクローズしました。彼は今でも約束どおり入金しているそうです。
ちょっとまどろっこしい手を使いましたが、これは公証役場に支払う費用を彼に快く支払ってもらうため、若干恩着せがましく振舞ったわけです。裏には理事会から回収費用をこちらで負担することは遅延損害金を取らないとすると実質的にマイナスになってしまうので費用(1万円程度のことですが)は絶対に滞納者のほうに負担して欲しいという意向を受けてのものです。ちなみにこの件は今年の初め頃処理した案件ですが、その後彼の部屋が漏水の被害を受けたときにちょっと相談に乗ってあげたこともあり、夏にはこの滞納者から暑中見舞いが来ました。管理組合の理事長からはその後音沙汰無しですから、不思議なものです。