上下階の問題はあまりタッチしていないようにしていますが、一つだけメール相談でうまく解決できた事例があります。
【相談要旨】
上階がカーペットからフローリング床へのリフォーム工事を行って以来、掃除機音その他が非常に機なるようになり、何とか原状回復させる手段はないかと下階の区分所有者からの相談。
【解決に向けて】
原状回復は現実的には非常に難しいことを前置きした上で、手続き的なことを確認した。管理組合への届出関係は規約どおり行われているか等。細則上、上下左右の部屋の承認が必要となっていた。依頼者(下階)は「騒音が発生したら誠意を持って対応する」という文言を手書きで書き入れて書面に署名押印した。その後、他の人の押印箇所の間違いなどがあり、再度作り直し作業中に既に工事は着工し書面が出来上がったときには工事は終わっていた。上階の人は依頼者が文言を書き入れた事実を知らずに、いきなり依頼者が音がうるさい、対応してくれと来たことに驚き、一切の接触を断ってしまった。以後、リフォーム工事業者が依頼者との交渉に当たっていたがのらりくらりで埒が明かない。私は依頼者に管理組合に申し出て届出関係の書類の中から図面のコピーをもらうよう指示。また、施工が適切なものか確認するため、管理会社にも評価を依頼(これはダメ元)してみるようアドバイスした。
結局は施工方法の検証に至る前に、リフォーム業者が上階の所有者を説得し、業者負担で現在のフローリングの上に高級感のある敷物を敷くことで合意し、試験的に実施後、騒音が気にならない程度であることを確認のうえ、依頼者と上階所有者との間でトラブルが解決し債権債務がないことの示談書を作成し、クローズ。
後で聞いたところでは上階所有者はその後住戸を売却したとのことで、トラブルが後に残るのを嫌ったのではないかと依頼者からの情報があった。普通はなかなか解決しない案件だが、幸運に恵まれて解決した珍しいケース。
また、メールのみのやり取りで示談書作成し、多少報酬をいただいた私の事務所としても珍しいケース。